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三角と円

「冬の大三角の1辺、つまり、シリウスとプロキオンを、ぐるっと円のようにして伸ばすと、ふたご座のポルックスとカストルが見えてくる。冬の空っていうのはさ、でっかい円なんだ。」

いつ、どこで、誰に教えてもらったのかさえ忘れてしまったが、僕は冬になると必ずシリウスとプロキオンを探し、そこから円を描いてふたご座を探す。この作業を終えると、またてくてくと歩き出す。いつもの、仕事からの帰り道だ。
いつも見えるわけではない。幸い、それほど明かりの多くない場所に住んでいるから、星を見るに不自由しないが、雲に覆われていたり、雨だったり、それと、知人を連れているときは、さすがに何分も立ち止まるわけにはいかない。一度どうしても我慢できなくなって星を探したことがある。
「おいおい、星なんか見て、給料が上がるのかい?」
と言われ、すごく残念な気持ちになって以来、ひとりでいるとき以外は空を見上げない。

会社は赤坂見附を降りて、マクドナルドのわきを少し歩いたところにある。いつもそこで、コーヒーとはいえないような黒い液体を胃の中に流し込み、会社に向かう。

太陽が昇っているとき、いつも思う。
どうしているのだろうか、と。
決められた時間にしか、現れない、星。
おい、お前たちは、普段はなにをしているんだ?
まさか俺みたいに、決められた部署で黙々と仕事をこなしているだなんて、言うんじゃないよな?

決まった時間になると明かりが灯る、空の星、と、アパートの部屋。

そうか、決まった場所に貼り付けられているのは、俺のほうだったんだ。

 

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あとがき

小説と言うのは、訴えたいメッセージを「隠し」て書きます。と、僕は信じています。
今回は、そのひとつが出てきちゃった。ひとつを隠すために、ひとつが姿を現してしまった。
隠されたもうひとつのメッセージ、わかりますか?

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